涙と笑顔のあいだ

HSC(ひといちばい敏感な子)高1ひとりっ子男子(2024年4月現在)の子育てを通し成長させてもらいながら、日常のモヤモヤの純度を上げるべく綴る50代ライターのブログ

息子が「しんどい」と言ったから昨日は学校に遅れて登校した。

昨日、息子は遅刻して学校へ行った。

理由は、朝「しんどい」と涙目で訴えられたから。

 

一昨日の夜、寝しなに「先生の叱り方がすごく怖く感じる」と言っていた。

「そうなんだね」

そう言いながら、どんな風に叱るのか聞いたら、自分が何かで叱られるというよりは、クラス全体に対しての叱り方がしっくりこないということだった。

怒鳴るとか、大きな声というよりは、息子曰く「追い詰めるような感じ」で、それが苦手なようだった。

 

一通り話を聞いてから

「つらい気持ちはわかったよ。だけど、先生もいろいろさ、大変なんじゃない? 大人もさ、感情はあるから。そういう言い方の人なんじゃない?」

そう言って、わかったかわからないかはっきりしない感じでなだめて、寝かせようとしたら、

「だけどつらいんだ」

と言った。

そして

「本当はもう一つ話があるけど、今は言いたくない」

そう言って寝た。

 

それからの昨日の朝の「しんどい」だった。

先生のことかな?

それとも、そのもう一つのことかな?

そう考えながら、なんとか誤魔化しつつ学校へ行ってほしい、ちょっとズルイ気持ちもあった。

 

一旦、ダイニングに戻ったけど「やっぱりしんどいよ」と言いながら私のところに戻ってきた。

「そうか、じゃあ、今日は……遅刻していくかね?」

そう言ったら、うなずいた。

「寝ないから、もう一度布団に入ってもいい?」

というので、わかったと言った。

 

学校に電話すると副校長先生が電話に出た。

「月曜日ということもあってか、ちょっとまだ『気持ちが整わない』ので、遅刻して登校させたいと思います。もしも、何か変更があったら連絡します」

そう言って電話を切った。

 

布団に潜っている息子に、どうしたいか聞いたら、

「もう少ししたら、話がしたい、ちょっと待って」

と言うので、待っていた。

 

「話してもいい?」

しばらくしてそう言ってきたので、布団の隣に座って息子の手を握った。

すると

「なんかすごく孤独感を感じるんだ」

息子はそう言った。

 

クラスで、僕のことを気にする人なんていない。

クラスに、心から話せる友達がいない。

それでもなんとか話せる人と話していると、脇から人が入ってきて、話を奪われて、話し相手も奪われてしまう。

去年のクラスは楽しかった。

あれが人生のピークだったらどうしよう。

 

「それに……」

そう言って続けたのは、近所の下級生が、息子と同じ名前でよく、その子の友達から呼ばれているようなのだ。

それを聞いていると、とっても寂しくなって、どうして俺はひとりなんだろうって思って孤独感に襲われる、ということらしかった。

 

「そうか。つらいんだね。寂しいんだね」

そう私が言うと

「そうだよ」

と少し怒ったように言った。

 

私は息子の話を聞いていたら、息子の感情が入ってきて、気づいたら泣いていた。

 

きっと息子も泣きたいはずだ、そう感じた。

 

「そうか。もし泣きたかったら泣いちゃおうか?」

そう言うと、おいおい泣き始めた。

息子の背中をさすりながら、私も泣いた。

 

ひとしきり泣いたあと

「絶対にさ、こんなに広い世界にはさ、話が合う人はいるんだよ。たまたま今のクラスにいないだけだよ。状況もずっと同じじゃない。何かのきっかけに話が合うことがあるかもしれないし、中学に行ったら、気が合う人もできるかもしれない。もしもいなかったら、その時は、何か好きな趣味とか習い事とか、始めてもいいし」

私が一気にそう言ったら、息子は頷きながらも、納得はしていないようだった。

 

そりゃそうだ。

だって、今、つらいんだものね。

 

「とはいえ、つらいよね」

そう言うと今度は大きく頷いた。

 

「うーん。じゃあ、どうしたらいいかね? だけど、お母さんが何か策を考えるよりも、君が『どうしたいか』が重要なんだよね。もちろん、何かサポートできることはするけど」

 

問題は解決してはいない。

どうする?

学校に今日行けるだろうかな?

 

誘導したのか、本人が行くって言ったか、昨日のことのはずなのによく覚えていないのだけど、その後、全然関係ない話をして、少し笑って、ご飯を食べて、着替えて、2時間目から登校した。

 

準備をしながら、何度かハグを求めてきたから、しっかりと抱きしめて、背中をさすった。

そして

「だんだんと大人に近づいてきて、今まで感じたことのなかったような複雑な心の状態になっていくからさ。お母さんに反抗したい気持ちが出てきたって、それは普通だし。だから大丈夫だよ。お母さんも、人間だから、感情的になることもあると思うけど、それでも、いつでも、お母さんは君の味方だから」

なんだか、言いたくなってそう言うと、

「俺はヨシタケシンスケさんみたいになりたい」

と言った。

理由を聞いたら、ヨシタケシンスケさんは、息子曰く「反抗期はなかった」ようだ。

 

そうか、なるべく揉めたくなんだな、と思った。

わかる、わかるよ、私もそうだったもの。

反抗期の時期、イライラはしたけど、親に申し訳なくて、反抗できなかった。

不機嫌そうな顔をするのが関の山で、しかも決まってあとでフォローしたな。

 

「だけど、もしかすると、反抗するかもしれないけど」

そう言ったから

「いいよ」

と言った。

 

学校に着いて、担任の先生が

「何かありましたか?」

と聞いてきたので

「特に何があったわけではないのですが、話が合う人がいないということで孤独を感じてしまって、月曜日ということで、気持ちが落ち着くのにちょっと時間がかかってしまいました」

とだけ私が伝えた。

 

「そうですか。わかりました」

 

「よろしくお願いします」

と言って教室を後にした。

 

あ、そうだ。副校長先生!

 

電話に出た副校長先生に「今きました」と伝えたくて職員室の前を通りががった。

 

目が合ったらすぐに廊下に出てきてくれて

「気持ちは整いましたか?」

と笑顔で聞かれた。

「はい。今、送ってきました」

そして、息子が「孤独感を感じている」という話をざっと話した。

「さっき、これを全部電話で話すわけにはいかず『気持ちが整わないので』と言いました」

多分、その表現が独特だと感じているのだなって思ったので説明した。

 

副校長先生とは、私が一昨年度と昨年度と2年間、PTAの会計をやっていたから、割と密に連絡を取っていた。

最初は話しづらい人かと思ったけれど、結構ユーモアがあって話しやすい人だった。

こう言ってはアレだけど、それほどの深みはないタイプの方だと思うけれど、逆に軽やかさに救われることも多かったので嫌いではない。

 

「そういうタイプの子は、中学、高校と、大きくなるにつれて、だんだんと話が合ってくると思いますよ」

「そうですよね。それは、本人にも言ってわかったようなのですが、とはいえ『今』つらいから、そこなんですよね」

「そうですよね。大人もだけど、子どもにとっては特に『今』ですよね」

「はい。だから、親としてできるのは『話を聞くこと』くらいかと思っています」

「ですよね。全然関係ない話をしてもいいですか?」

副校長がそう言うので何かと思ったら、ご自分が、肩が痛くて病院に行ったのだけど、ろくに話を聞いてくれるわけでもなくて、検査を受けさせられて、肩もなおらず、モヤモヤして帰ってきたという。

「話をしっかり聞くことが本当に大事だと思いました」

どうやらその例だったらしい。

 

「そうですよね。しかし、肩が痛いのに、話も聞いてもらえなくて、大変でしたね。私でよかったら、話を聞きましょうか?」

そうちょっと冗談を言って、二人で笑った。

 

学校を後にし、気になりながらも、どうすることもできないので、そうだ、今は、リフレッシュしようと思った。

 

もしかすると、電話がかかってくるかもしれないから、遠出はできない。

なので、おにぎりを買って公園の芝生でひとりピクニックをした。

 

最近は、私は、家族が大変なときこそ、ひとり時間を充実させて、エネルギーを充電することにしている。

 

午後に帰ってきた息子に話を聞いたら、先生と10分くらい、レトロゲームの話をしたら楽しかったと言った。

 

そうなのだ、息子は「昭和」好き「おしゃべり」好きなので、「外で遊ぶのが好きなクラスメイト」と合わないのだ。

ちょうど30歳の先生と世代的に話は合うようだった。

 

「先生は今日は叱らなかったの?」

「うん。でも一回、不機嫌そうな顔をされた」

「え? どんなとき?」

「それは今言いたくない」

「そうか、わかった」

 

解決したのかしないのか、よくわからない状態ではあったけれど、今朝は、どうにか問題なく学校へ行った。

 

そういえば、昨晩、副校長先生と話した、と息子に言ったら

「普通の保護者は、副校長先生とそんなに親しげに話さないでしょ」

と言われた。

「そうかもしれないけれど、電話出てくれた先生だから、言っておこうと思って」

「でもさ、だったら、俺の話メインにしてよ。全然関係ない話じゃない。医者とか、親業とか」

そうだ、副校長先生に、最近知った「親業」について、ミニレクチャーまでしたんだった。

それには、旦那も

「そんな話もしたの?」

って驚いていた。

 

確かに、ちょっと調子に乗ったかもな。

 

でも、お母さん、こんな感じだけど、息子よ、君のことをとても大切に思っているよ。大好きだよ。