小5の息子の夏休みがもうまもなく半分を過ぎようとしています。
「夏休みに入ったらユウを連れて遊びに行くね」
そう言っておきながら連絡していなかったことを思い出し、昨日、私の実家に電話しました。
「明日都合どう? 箱根に行ったお土産も渡したいし」
幸い、両親の都合もいいということで今日息子と一緒に実家に向かいました。
近くのパン屋でお昼に食べるパンを買いました。
両親は息子と私のためにアイスを買っておいてくれました。
今日実家に行った目的は、旅行のお土産を渡すことでしたが、実は他にもうひとつ目的がありました。
それは、私が書いた短編小説が載った書籍を見せるためでした。
そして、その短編小説の題材になったのは「母の乳がん」だったのです。
小説のストーリーはフィクションですが、そこに出てくる「母」のモデルは私の母でしたし、主人公の女性は私自身がモデルでした。
そこに出てくる舞台は架空ですが、母が乳がんになったと知った時などの主人公の気持ちは真実です。
実は、この話を書いたことは母には黙っていました。
2年前に「優秀賞」に選んでいただいた時も、小説の題材については黙っていました。
母がそれを知って傷ついてしまったら嫌だったからです。
しかし、今から約半年前に、書籍に載せる予定の作品のひとつに選んでいただいたと聞いて、載せることを承知した時に、少し迷いましたが、本になったら母にしっかり話そう、そして、作品を読んでもらおうと決めました。
それが今日だったのです。
たわいない会話の後に、照れ臭かったのでテーブルの隅に
「この本なんだ」
と言ってそっと置きました。
事前に母の乳がんを題材にさせてもらったこと、そのことを無断でさせてもらっていたことは詫びていました。
母は、
「いいよ。小説家というのは、そういうものらしいよ。別に構わないよ」
と言ってくれていました。
けれども、実際に読んでどう感じるのかはわかりませんでした。
正直とても怖かったです。
だけど、せっかく書籍に載せてもらったものを読んでもらわないのも残念だと思ったのです。
しばらくして
「読ませてもらうね」
そう言って母は書籍を手に取り、私の目の前で読み始めました。
緑内障で視野がだいぶ狭まってしまった母でしたが、一生懸命にピントを合わせながら時間をかけて読んでくれました。
私は気恥ずかしくて、本を読んでいる母をまともに見られませんでしたが、視界の端で、涙を拭う母の姿を感じました。
驚きました。
そして嬉しかったです。
「とてもよかったよ。よく書けているね。涙出て来きちゃったよ」
母はそう言ってくれました。
面と向かって気持ちを伝えるよりも、物語の登場人物の言葉や心理描写を借りて伝える方がもしかしたら心に奥の方に届きやすいのかもしれないと感じました。
フィクションなのですが、母に近い登場人物に感情が入ったのかもしれません。
とても不思議な時間でした。
しかし、また、物語を書いてみようという力をもらえました。
私が書いた短編小説は、この本に載っている「母と温泉」という話です。
この本には25個のお話が載っています。
どれもとても短いですが、とても素敵なお話ばかりです。
私のは文章のみですが、中には、QRコードを読み込むとショートムービーが見られる作品もあり、とてもお得だと思います。
ティーン向けに作られたものですが、大人の方も楽しめると思います。
買うのはちょっと……という方、もしかしたら図書館にあるかもしれません。
地元の図書館にもありました。
そこは「学研」さんの強みかもしれません。
2年前にこの話を書いた時は、まさかこのような展開が待っているとは思いませんでした。
人生何があるかわかりませんね。
不安もありますが、もしかしたら楽しいことも待っているかもしれないと思い、未来へ向かって今を生きたいと思います!