涙と笑顔のあいだ

HSC(ひといちばい敏感な子)高1ひとりっ子男子(2024年4月現在)の子育てを通し成長させてもらいながら、日常のモヤモヤの純度を上げるべく綴る50代ライターのブログ

街の中の時計

昨日の正午ごろ、私は表参道に居た。

全く場違いなところだ。

普段着では周りの雰囲気に圧倒されてしぼんでしまうと思った私は、最近お気に入りのツーピースを来て戦闘モードで小洒落た街に挑んだ。

 

しかし、街は思ったよりもカジュアルな仕様だった。

拍子抜けした。

しかし、キラキラしていた。

目の前のこの街は、私のお気に入りのツーピースにもそぐわないが、かと言っていつもの普段着だったらもっと肩身が狭かったと思うので良しとした。

 

私が、何故表参道に挑んだかというと、愛用のiPhone7のバッテリーが風前の灯火だったからだ。

経年劣化により、かなり不便な状態だった。

新しい機種に変更するほど機能的には困ってなかったので、とりあえず今回はバッテリー交換をすることにした。

入っていた保証は対象外だったため、実費覚悟でApple Storeへ向かった、予約をして。

店内に入るとカジュアルなユニフォームの笑顔が素敵な女性スタッフが声をかけてくれた。

 

予約をしていたことを話すと、地下階へ行くように誘導された。

地下階にいたスタッフに話をすると、今度は壁際で待つように言われた。

しばらく待つと若い男性スタッフが来てくれて、滞りなく受付をしてくれた。

バッテリー交換以外の故障は見つからなかったので、小一時間で作業は終わる予定だと言われた。

思ったよりも早くできることに驚きながらも嬉しかった。

指定の時間ごろ戻って来てくださいと言われて、表参道の街に飛び出た。

 

しかし、である。

 

あ、ない……。

戻ってくる時間を確認しようと、左腕に目をやると、あるべきものが腕になかった。

今日に限って、腕時計を家に忘れてきてしまったのだ。

不覚だった。

 

 

夏場は汗で痒くなる時もあるので、カバンに入れっぱなしの時もあるけれど、だいたいは外出時は、身につけているか、持ち歩いていた。

けれども、思い返すと、腕時計をはめていてもいなくても、多くの時間、スマホで時間を確認していることが多かったことに気づいた。

はてさて、これから小一時間後、約束の時間に戻ってくることはできるだろうか?

どうやって時間を確認しようか?

 

一昔前は、街にはもっと時計があったような気がするが、ざっと見渡したところ、時計はどこにも見当たらなかった。

困った私は、とりあえず、銀行のATMへ行った。

 

あ、これは使える。

お金を引き出した時の明細書に時間が印刷されていた。

しかし、またATMでお金を引き出したり、あるいは、残高照会するのも一苦労だ。

他に方法はあるだろうか?

ATMで残高照会することを保険に他に方法を考えてみたけれど、他の方法が見つかる前にお腹が空いていることに気がついた。

とりあえず小腹を満たそう。

おしゃれなお店は入りにくい。一方で敷居の低いチェーン店はどこも混んでいた。

参ったな……。

時計探しに加え、お昼ご飯のお店探しもミッションとなった。

 

結局、外苑前の方に歩き、avexのビルの下にある広いドトールが外から見ても席が空いていることがわかったので、そこに入ることにした。

ミラノサンドCとホットのカフェオレを頼んで席について店内を見回してみても、時計は見当たらなかった。

しかしその代わりに時間がわかるものが手に入ったことに気がついた。

レシートだ!

レシートに印刷された時刻は、あと17分でiPhoneの修理が仕上がる時間だと知らせてくれた。

ゆっくりをランチをし、ゆっくり歩いてApple Storeに戻ればちょうど良いとわかって、久しぶりにホッとできた。

 

食べ終わって戻る道々、念のため、コンビニでのど飴を買った。

レシートは約束の時間より10分過ぎていた。

これで大丈夫だ!

 

またおしゃれな店内に吸い込まれ、約束のものを受け取ってから、街に吐き出された。

任務終了。

手元に戻ってきたiPhone7の画面を見ると、もうこの街を出なければ息子の帰りに間に合わない時刻を示していた。

残念。

時間があれば寄ろうと思っていた明治神宮を後ろにして、表参道の駅の地下へ降りて行った。

 

帰りの電車で、見かけは変わらないけれど、電池の減りがゆっくりになった使い慣れたiPhone7を手にして達成感に包まれた。

ただバッテリー交換をしただけなのに、なぜこんなに冒険をした気分になったんだろうって思ったらなんだか妙におかしくなった。