「仕事しない手だね」
まだ独身の頃、手を見てそう言われた。
誰に言われたのかは覚えていないけれど、今から15年くらい前のことだったと思う。
そう言われて、イラっとしながらも、自分の手をまじまじと見てみると、確かに、白くてふっくらとしていた。
仕事をしてないねと言いたかったのか?
それとも、綺麗な手をしていると言ってくれたのか?
その真意はわからないけれど、確かに、水仕事はほとんどしないし、母に、ご飯の用意も洗濯も頼んでいたんだ。
そうだ、甘えていたんだよね。
結婚して新生活が始まり、慣れないながらも、炊事・洗濯・掃除とひと通りの家の仕事をするようになって、年も重ねて、だんだんと節くれだった手になってきた。
冬場になると、あかぎれで血だらけになったり、乾燥し過ぎて、ビニール袋が開けられなくなったりしている。
もう、仕事しない手とは呼ばせないぞ!
そう意気がってみても、あの白くてふっくらとした手には戻れはしない。
ああ、そうやって、年齢のせいにしてみても、多分、同じくらいの年齢の人でも、ちゃんと手入れの行き届いている人は、年を重ねて手の作りが大人になったとしても、仕事をして、ふっくらとしていなくても、その人の美しさというのは表せるのかもしれない。
私みたいに、最初から諦めていたら、ずっと血だらけのままなのかもしれない。
それはちょっと悲しいな……。
そんな風に思っていた時、あることを知った。
どうやら、私が好んで使っている台所洗剤は、「弱アルカリ性」のため、余計に手が荒れやすいのだということを!
え!? そうなの? 知らなかったよ!
洗浄力が気に入っていたけれど、洗浄力が高いということは、手の油分も持って行かれるということなのかも……。
この冬、ちょっと冒険をして、これを買ってみた!
カモミールの香りの好き好きはあると思うけれど、私は結構気に入った。
手の荒れも、昨年に比べて、やわらいだ気もする。
気になる洗浄力は、これがなかなか優秀で、スッキリ洗えるから、本当にすごい!
あ、でも、今年の手荒れが、まだましなのは、これのおかげだけではないと思う。
無頓着な私だけれど、実は、最近迷い込んだ化粧品のお店「L'OCCITANE(ロクシタン)」で、ネイルオイルというのを購入したのだ!
それをできるだけ、夜寝る前につけているので、あかぎれは減ったのだと感じている。
私の性格上、目の前にある「不都合」「不便」は、よくいうと受け入れてしまい、悪くいうと、改善しようとあまり思わないのだけれど、
「もしも、手が荒れてなかったら、よくないですか?」
「血だらけにならないで済むとしたらいいと思いませんか?」
そうした声なき声に導かれて、改善してみようと思えたことは、幸いだった。
とはいえ、台所洗剤は、今まで買っていたものを買い控えて、新しいものに買い換えるという形だから、新たな持ち出し金はないけれど、ネイルオイルは、結構、庶民の私にとっては安くはないし、迷うところではあった。
でも、あかぎれに悩まされる時間を考えると、そうでない時間を手にすることができるのなら、高くはない気もする。
「L'OCCIANE」のお店に行くと、そうした私も気がつかなかった美への潜在的な願望に気づかされる。
ちょっと値が張るな……と思って、もちろん全てに手は出せないけれど、ワクワクしたり、心地いい時間が手にできそうな期待感に包まれて、いい気分になることが多い。
そう考えてみると、どのお店も、そこに足を運んでくれた人の潜在的な願望に、アクセスできれば、喜んで、買い物をしてもらえる可能性があるんだなって思う。
あれ? なんの話だったけ?
そうだ。手荒れの話だった。
血だらけではないものの、まだカサカサしているので、冬場は、ちょっと面倒でも、ビニール手袋をして食器洗いをしようかな?
多くの目の前の「不都合」や「不便」には、頭をひねれば、対応策があるのかもしれない!
小さなことだけれど、改善してみようという気持ちなった今回のことは、私にとって大きな一歩だ。
この気づきに感謝したい!