今日、息子のスイミングスクールのテストだった。
上達のスピードがゆっくりな彼は、後から入ったお友だちに抜かされて、なかなか、課題をクリアできなかった。
クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと、次々にクリアし、スクール自体を卒業していく仲間たちを見送りながら、母親の私の方が、ヤキモキしていた。
その中でも比較的じっくり派の女の子の友だちが、今日、背泳ぎをクリアすると、来週から、遅い時間に変わるため、一緒に通えなくなるのだ。
クロールもまだ泳げない息子は、彼女に追いつけないまでも、これ以上、差をつけられたくなかったようだった。
テスト前の練習で、息子は、10mあたりで立っていた。
「こりゃダメだ……」
25m泳げなければ、合格しない。
まだまだだな……
私はガッカリしながらも、もう少し練習が必要なんだなと自分に言い聞かせた。
いよいよ、テスト!
すると、息子は、10m越え、15mを越えた!
え! 本当に?
20m!
もしかして?
……立った……。25m手前で立ってしまった。
だから、不合格だった。
水から上がった息子は、ガックリとうなだれて、とぼとぼと歩いていた。
だけど、私は嬉しかった。
必死に頑張っていた息子を抱きしめたくなった。
女の子の友だちは、背泳ぎを綺麗に泳ぎきり、合格した。
ロッカーから着替え終わった息子が出て来てから
「頑張ったね。残念だったね」
と労った。
女の子が新しいクラスの帽子を買っているのを待ちながら
「オレ、死ぬほど頑張ったんだよ」
無念さをにじませ、涙を拭った。
これ以上声をかけるともっと泣きそうで
「うん」
とだけ言った。
今日、私は、自分なりに挑戦して書いた文章が基準をクリアせず、受講中のゼミでオッケーがいただけなかった。
悔しかった。
もっと、うまくなりたいと思った。
だから、息子に
「お母さんも、今日、クリアできなかったんだ。だから、おあいこ。お互いに頑張ろうね」
と言って握手した。
ほんの少しだけ、笑って、息子が頷いた。