「◯◯も、スイミング通えばいいのに」
スイミングスクールのある日、嫌だ嫌だという息子がそんなこと言うものだから驚いた。
◯◯くんとは、息子のクラスメート。
でも、確か、彼のママと息子がスイミングを習っていると話していた時に、
「習いに行ったら? とは言ったんですが、◯◯は、まだいいって言うんですよ」
そう笑顔で言っていた。
「中学生くらいでいいってことですかね?」
「いえ、50歳になったらって言ってます」
「え? 50歳ですか?」
正直驚いた。
息子たちはまだ10歳。
人生100年時代と言えども、かなりのロングスパンだなと思った。
何か只者ではない気がした。
あ、◯◯くん、小4にして、元素記号にもう飽きたと言ってたなぁ。
そんなことを思い出して
「◯◯くんは、50歳になったら習うって言ってたよ」
息子に伝えてみた。
「え? もう少し早めに習った方がいいんじゃないかな? だって、学校でクロール泳ぐように言われたら、困るじゃない?」
「だよね」
息子が、いつも、私が息子に言うことを言っていて、複雑な気持ちになった。
息子は、スイミングスクールにイヤイヤでも通い続けて、大分泳げるようになったし、気持ちも強くなれた気がする。
だけど、◯◯くんのママの顔を思い出し、お子さんの気持ちを尊重し、笑顔でいる強さに圧倒されたのだ。
人それぞれだけど……。
我が家は我が家で考えてのこと、だけど……。
あ。
そうか。
どっちでもいいんだな。
どっちもきっといいんだよな。
なんかそう思えてホッとした。
息子が、今日、笑顔で、スイミングで知り合った仲間と笑い合っていたのをみて、また、ホッとした。
うん。
これでいい。
とりあえず、だけど、いいことにしよう。