「あれ? この大きさだっけ?」
スーパーマーケットの土鍋売り場で、私は固まった。
しまった。甘かった。
土鍋売り場にくれば、自分が買いたい土鍋の大きさが一目瞭然だと思っていたのだ。
我が家には、土鍋はふたつある。
1人用と、確か2~3人用のだったと思う。
結婚した時に、旦那とふたりで食べる用と、旦那の帰りが遅い時に、1人分だけ作り置きできる用に買ったのだ。
10年以上不便はなかったのだけれど、息子が量を食べるようになって、土鍋が小さく感じてきた。
それでも、どうにか使っていたのだけれど、鍋料理をする度に、ああ、もう少し大きければいいのに……と思っていたので、とうとう買い替えることにした。
ひと回り大きい土鍋を買おう!
そう思って、売り場に出かけた。
サイズなんて計らなくたって、今の土鍋が何号か調べなくたって、売り場に行けば、大きさはわかると思っていた。
今、使ってるもののサイズは、だいたい感覚でわかるし、それよりワンサイズ大きいのを買えばいいんだ!
しかし……。
唖然とした。
さっぱり、わからなかったのだ。
売り場には、8号サイズが大量にあって、あとは、9号、10号がひとつずつ、それに、6号とやらがひとつあるだけだった。
はて。
我が家にあるのは、どれなんだろう?
6号を手に持ってみた。
これでは絶対ない。
9号でもない。
じゃあ8号?
うーん。なんだかそんな気がする。
7号サイズというのもあるのだろうか?
たまたま売り切れなのかと思ったけれど、7号サイズは、売り場さえなかった。
7号というのは、そもそもないのだろうか?
後で考えてみれば、その場で、スマホでググればよかったのだ。
だけど、その時は、7号というサイズはなくて、家にあるのが8号のような気がしてしまったのだ。
だから……ということは……9号を買えばいいのだな、きっと!
そう思ってしまったのだ!
レジに行き、9号を買った。
ああ、やはり、ひと回り大きい土鍋は重いなあ。
だけど、今日から、余裕を持って鍋を作ることができる! 嬉しいな!
ワクワクしながら家路を急いだ。
だけど、なんか、ちょっとだけ気になった。
だから、家に着くとすぐに食器棚をあけ土鍋を出してみた。
あれ? こんなに小さかったっけ?
売り場で見た8号よりも明らかに小さい土鍋を私は手にしていた。
買ってきた、9号の土鍋と並べて、私はため息をついた。
これは……ひと回りどころではない。ふた回り大きい土鍋だったのだ。
どうやら、我が家にある土鍋は7号だったらしい。
ああ、8号でよかったのか……。
“大は小を兼ねる”
途方にくれながらも、私は、都合のいい言葉を見つけた。
そうだ。
小さすぎるよりは、大きすぎる方がきっといい。
早速、9号の土鍋を洗って、いつも通りの量の水を入れた。
いつもはなみなみと溢れんばかりに漂う水面が、土鍋の半分くらいの位置で止まっていた。
人参を水から入れ、沸騰すると、悠々と泳いでいた。
まあいいか。
人参が気持ち良さそうだし。
「誰かが食べ残したみたいな量だね」
出来上がった鍋を食卓に置くと、息子がそう言った。
「確かに」
小さすぎるよりは、大きすぎた方がいいけれど、やはりちょうどいいのが一番いいな。
息子がもう少し大きくなって、例えば、ふたり分おかずを食べるようになったら、ちょうどよくなるよな、きっと!
しばらくは、大きすぎる土鍋をみて、苦笑するかもしれないけれど……。
やはり、相対的な比較は、あやふやなものだ。
だから、今度は、しっかりと客観的な数字をメモして、買い替えに行こうと思う。