涙と笑顔のあいだ

ひといちばい敏感な小学生ひとりっ子男子の子育てを通し、母として成長させてもらいながら「ライター・小説家」になる夢も諦めない40代主婦のブログ

車のナンバーが「1122」だった頃

「近所のみんなにね、お宅のご夫婦は本当に仲がいいですよね! って言われるのよ。嫌になっちゃう」

まんざらでもなさそうに、母は言った。

お正月に、実家に遊びに行った時のことだった。

「お宅のご夫婦は本当に仲が悪いですねって言われるよりはいいじゃない?」

「仲が悪そうな夫婦に向かってそれは言わないでしょ。普通」

「まあ、そうだね」

みんなで、はははと笑ったけれど、それは、仲がいいって見られるくらい、しっかりと父にしがみつくように歩かないと、暗い道は歩きにくいという意味でもあった。

母の緑内障は、だいぶ進み、視野はかなり狭くなっている上に、白内障も併発して、さらに白く濁って見えるそうだ。

私が、ここ数年、卓球をPTAの仲間とやっていることを話したら

「目が悪くなかったら、一緒にやりたかったな」

母は笑いながらそう言っていた。

絵手紙を書くのが趣味だったのに、それも、目が悪くなってきて、描くのが億劫になってきていると言っていた。 

「今年最後かもしれないから、年賀状、頑張って描いてみたよ」

そう言われて預かった原画を、我が家のプリンターで印刷をしてあげたのだけれど、いつも細部にこだわるはずの母の絵は、ぼんやりと黒っぽくインクで汚れていて、パソコンのソフトで綺麗にしようとしてくれた旦那の努力も虚しく、いつもより仕上がり具合があまりよくないものだった。

だんだんと、できないことが増えていく。

そう言ってしまうと、なんだか切ないし悲しい。

だけど、やはり、人は、老いという避けられないものと向き合っていかないといけないんだよなって親を見ていると思う。

正直、少し寂しい気持ちもある。

だけど、それ以上に、母と父に会う度に、私は、二人に力をもらっている気がするのだ。

それは、できないことが増えていくことを、静かに受け入れながら、できることに注力して、できるだけ、楽しく過ごそうと工夫しているように思うからだ。

「二人揃っていることは、本当にありがたいことだよ」

80歳前後の両親の言葉に、重みを感じる。

時には、もちろん文句も言うし、お互い、娘の私に愚痴るけれど、それと同時に感謝し合いながら、助け合いながら、過ごしている二人は本当に素敵だと思う。

そう言えば、家に車があった時、そのナンバーが『1122』だったことがあって、父の仕事仲間に

「ナンバーまで『いい夫婦だな』!」

って茶化すように言われたということを聞いたことがあった。

なんだ! 昔から、いい夫婦だったんじゃん!

そう思い出したら、なんだか嬉しくなった。

旦那と私は、夫婦になってもうすぐ13年経つけれど、それでも、いろいろなことがあった。

困難に見舞われて大変な時もあったけれど、その時こそ、絆が深まった気もする。

父と母は、もうすぐ夫婦になって50年。

今も、さらに絆を深めていると思うと、なんかいいなって思う。

私も、旦那と、ずっと会話と笑顔の絶えない仲で居られたらいいな!

頑張り屋の両親だから、今も、助けてもらうことばかりだけれど、これから、サポートすることも増えると思うから、遠慮なく頼ってもらえるように、いい大人にならないとなと思ったら、背筋が伸びた。